PINKFOX 強制収容17


言うと彼女はツカツカと美智子の横を歩き奥の壁に掛けられたボタン装置をカチャカチャと流暢に叩くとドアの
ロックがはずれ、美智子の目にした事のない大きなフロアが・・・
そこはまるで大きな帝国ホテルのロビーのようにだだっ広く中央には映画館のような巨大なテレビジョンが
あり、豪華なソファーやベッドが周りを囲っていた。
女医はその装置のようなものを探り、何かを見つけたらしくそれをキョトンとしている美智子にハイ、と見せる。
「あ・・・・・」
それはどこにでもある携帯電話。
しかし島に来てからは初めて目にするもので懐かしい。
「これは・・・」
クスッとイタズラ気味に笑う女医。
「感の鈍い子ね。蜂の巣司令官の私物よ。当然でしょ?ここの頭ですもの。ただこのテレビジョンは・・・彼の
盗撮の記録よ。男というのはいつの時代もこうなのかしら(苦笑)」
テレビのリモコンを押すと予想通り彼が今まで体を交らわせてきた女性たちとの生のセ○クス画像がその巨大
な媒介に映し出された。
(あ・・・)
それは死んでしまった真紀や優子、そして美智子が知らない、命を掛け、体を裸体を掛け亡くなっていった罪人女性たちの記録であった。
椅子に片手をもたれかけ、真剣な表情で女医は言う。
「この島はもう終わりです。司令官はやがて本土からの勅命で抹殺されます。何故だか分かるかしら?」
驚く美智子。
「!!・・・そ、そんな・・・・・・」
驚き、汗を出し動揺する彼女を見、エリート女医はインテリメガネを右手人差し指でクイッとやり更にしゃべる。
「・・・たく。純粋というか無邪気というか・・・あなたは本当に日本の・・マタ・ハリだわ(苦笑)。馬渕美智子というピンクフォックスと呼ばれた産業スパイはついには国までひっくり返した。フフ・・・」
微笑む女医にただ意味が分からず汗を掻き、立つ美智子。
その彼女を優しく見ながら先ほどの携帯電話のボタンを押し、耳に通話口を持ってきながら言う。
「私はあなたのような男を体で虜にするアバズレは大嫌い。でも・・・研究室の室長として・・最初の約束は
守らないと非道徳だと思うの・・・あ」
誰かと繋がったようだ。
(・・・リョウタさん!?)
美智子は直感的に思い、ドキドキする鼓動を抑えられない。
なんという事だろう。
そうなのだ。
最初の約束とは彼女の精○と志願者との勾配により、死んでも子孫を、来世を残せますという、アレなのだ。
そして恐らくその相手とは島のリョウタであろう。
もうここで亡くなり誰とも会えずに死ぬどころかリョウタが・・・女医が最初に約束した次の子孫とは・・・
(あ・・・ううう・・・)
感激し、泣きそうになる美智子。
女医が少し電話口で話、やがて目を美智子にやり、代わる。
震える手。

私の・・私の・・子供?
数知れない男性と体を交わした汚れきった自分が赤ちゃんを授かる?
色んな思いが彼女の脳裏をかけめぐる。
産業スパイとなり男を道具だと思っていた頃・・・やがて島に渡り真実の真心に触れた事・・・
走馬灯のようによぎり最後に思えたのはたった一つだけ・・・
それは心からの

嬉しい・・・

の一言だけであった。
下を向き電話を受け取る美智子は涙が流れないようにと鼻水をすすり上を向く。
目の前には優しげな女医が。
が、携帯を耳元にやった次の瞬間、聞こえてきたその声はリョウタではなく、島の誰でもなく政治家でもない。
彼女は一瞬にして固まった。
固まり、動揺のあまり激しい震えの為携帯電話を床に落としてしまう。

カチャーン!!

「・・・・ぁ・・・・・・・・・・・・」
あぶら汗を流しその場にしゃがみこむ美智子。
無言の女医。
その携帯電話の相手は美智子が本当に好きで小さな頃から一緒だった猫宮ヤスシだった。


                                                            18に続く